人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/フランケンシュタイン(1931年)

アマプラで観たホラー映画シリーズです。
1931年制作、アメリカのSFホラーです。

 

 

 

【あらすじ】
フランケンシュタイン男爵家の嫡男である科学者・ヘンリー。
電気療法と電気生物学を研究する彼は、『命を与える光』を証明するため、助手のフリッツと死体を集め、人造人間を造り出した。
だが出来上がったそれは、ヘンリーにまつろわぬ『怪物』であった。

 

【ひとこと感想】
この映画の科学者は『マッドサイエンティスト』ではないゆえに胸糞が悪い。

 

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①これはマッドサイエンティストなのか?
②ヘンリー博士の正体。
③だからこそ胸糞が悪い。

 

【①これはマッドサイエンティストなのか?】
フランケンシュタイン』における勘違いといえば、

フランケンシュタイン』は怪物の名前ではなく、それを作り出した博士の方。

です。ジェイソンはチェーンソーを使ったことがない、みたいなものですね。
それと同様に、自分はこの映画の科学者を『マッドサイエンティスト』の元祖だと思っていたのです。
期待しました。ワクワクしました。ですがそれは砕かれました。

( ・⌓・)<この人、(俺の考える)マッドサイエンティストじゃなくない……?

※以下、あくまで私見です。

マッドサイエンティストの定義を書き出すと長くなるので、自分が『マッドサイエンティスト』というものに求めるもの=概念を書きます。

前提はたったひとつ。

自分自身の研究に、異常な執着心を持つこと。

巷では『生命、人権を軽んじる〜』などもありますが、それはあくまで結果論。
彼ら彼女らは研究心に取り憑かれるあまり、生命や人権を後回しにしがちなだけなのです。

それが何ですか、このヘンリー・フランケンシュタイン博士。
自身の研究にたいして執着していない。
と、自分にはそう見えました。

 

【②ヘンリー博士の正体】
作中でのヘンリー博士の行為は、

①助手のフリッツと墓荒らし。
(ただし危険なことはフリッツにやらせる)
②上司のウォルドマン博士から脳みそを盗む。
(ただし実行したのはフリッツ。事故で殺人犯の脳になりましたが)
③『命を与える光』こと雷で、人造人間を作る。
④自分に服従しない怪物だったと判明し、処分を決める。
⑤ただし対策は閉じ込めただけ。
⑥怪物のことは忘れて、父親に命じられて美人婚約者とハッピーサマーウェディング

⑤と⑥で、フリッツと、関係ないウォルドマン博士が死にました。

( ・⌓・)<……は???

としか言いようがない。マジかお前。仮にも科学者が、自分の作ったもの放置して結婚式てお前。

博士が怪物を作った目的もよく分からなかった。
自分の研究をバカにされて……みたいな被害者ヅラしていましたが、簡単に断念しました。オトンに命じられて。あっさり忘れて女とヨロシクできる程度のものだったのです。

その程度の執念しかなかったのです。

人様の墓を荒らし、盗み、勝手に実験材料にしたのに、後始末すらせず見て見ぬふりをする――これのどこが『狂気に至るほど自分の研究にすべてを捧げた科学者』ですか。

『透明人間』の博士を思い出してみましょう。

彼は身分差のある恋人と結婚するために研究に熱を入れ、結果、自ら怪物になりました。
それと比べると、「マッドはマッドでもクズという方のマッドやないかい」という感情が生じます。
そんなヘンリー博士の人間性を表現するセリフがコチラ。

 

(研究室を捨てて、明るい庭で婚約者といちゃつきながら)
「君といると天国のようだ」

 

( ・ω・)<……

( ・⌓・)<いやこれサイコパスって言わん?

(※ここでいう『サイコパス』は、『責任感のない権力者』という意味です)

(※ここまでムカつくのは、たぶん博士が権力者側だというのもあります)

(※ノブレスオブリージュって知ってるかこの貴族野郎)

 

【③ゆえに胸糞が悪い】
地下の研究室から出てきた怪物は、心優しい女の子と出会います。
一緒に湖に花を浮かべて遊び、あたたかな空気の中、
怪物は女の子を湖に投げ入れます。
女の子は花と違って水に沈むと、怪物には分からなかったから。

何故だ。
何故こんな科学者ごっこをしたかっただけのやつのために、こんな小さな子が犠牲にならなければならんのだ。

一部の責任感のない権力者たちのやらかしで、
犠牲になるのはいつだってそういう人々です。

怪物の存在を知り、町の男たちは立ち上がります。
松明を握り、怪物を殺せと行進します。
それを怯えた顔で見つめる女性と子どもたち。
なんとも暗示的な、なんとも既視感のある、90年以上前から変わらない光景だ、と思いました。

 

【まとめ:哀れな怪物の末路】

フランケンシュタイン』と聞いて思い浮かべる姿の怪物は、最初から最後まで、恐ろしいけれど哀れでした。

 

「生きてる 生きてる 動いている」

 

創造主のはしゃいだ声で怪物が目覚める。
まぶたで半分隠れた、『虚』さえ無さそうな両目。
針金を入れたようなぎこちない動き。
松明の火を怖がり、
見せ物小屋の動物のように鞭で叩かれ、

服従しないから殺される。


火炙りにされて叫ぶ怪物に、ずっと憐憫という感情を抱きました。

……。

そんな胸糞映画のラスト。ヘンリー博士はふつーに助かり、使用人たちの「フランケンシュタイン家、カンパーイ」でエンド。
すごい。『孤島の鬼』の最終章のタイトル「大団円」ばりにムカついた。お前が(逆撫で映画)ナンバーワンだ。

そんな、もしかしたら当時の差別を描いていたかもしれない今作品、終始 (# ゚Д゚) でした。
いつか原作を読みます。
(全然違うらしいので)

【おまけの余談】
花嫁衣装のエリザベス(ヘンリー博士の婚約者)が襲われて、ベッドで力なく倒れているのを発見される場面、

( ・ω・)<あっ、昔の映画に出てくる虚弱美女の気絶の仕方だ!

この気絶の体勢、ほんとよく見かけますよね。
歌舞伎の海老反りみたいなやつ。寝違えそうだと毎回思います。(ガチの余談)

 

次回は8月23日月曜日、
2020年制作、日本のサスペンスホラー、
人狼ゲーム デスゲームの管理人』の話をします。
(クーポンでレンタルした)

 

鳥谷綾斗