人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/窮鼠はチーズの夢を見る

( ・ω・)<メリクリです。

本日はクリスマスなので、それにふさわしいラブストーリーをひとつ。
映画館で観てきました。

www.phantom-film.com


2020年制作、BL漫画が原作の15禁のヒューマンドラマです。

( ・ω・)<…15禁でいいのかアレ。

【あらすじ】
自他ともに認める、「誘われたら流されちゃう」系サラリーマン・恭一。
ある日恭一の元に、妻から浮気調査を依頼されたかつての後輩・今ヶ瀬が現れる。
ゲイの彼はずっと恭一を愛していた。
浮気の事実を握り潰す代わりに、今ヶ瀬は恭一自身を求める。

 

【ひとこと感想】
BLを期待して観に行くと大火傷するけど、最後まで観ればちゃんとBLだった。

 

【3つのポイント】
①ラブシーンがびびるほど多い。
②『同性と愛を営む=ドブで生きる』なのか?
③最後にあるのはささやかな、けれど無視できない『変化』。

 

【①ラブシーンがびびるほど多い】

( ゜Д゜)<15禁て乳首と尻見えていいの?

のっけからぶっとんだ所感で失礼します。
いやでもまーーーー『ラブシーン』が多い。恭一は男女ともにやりすぎである。体力すごいな???
『リップ音』も『濡れたような水音』も『肉と肉が打ち合う音』もバンバン出てくる。
私の座席の数列前に高校生くらいの方々がいたのですが、無駄に心配になりました。
嫌悪感を覚えるものもあれば、ドキドキするもの、幸せそうなもの、苦しそうなもの。バリエーションすごいなと勉強になります。

勉強になる反面、私の中の繊細な乙女心が「男女の絡み〜〜(辟易)」みたいな拒否反応を起こしたわけで。
思った以上にがっつり描写されているので、「ヒャッハーBLだァ!」という方は注意が必要です。
(でも最近のBL、結構男女の絡みあるよねー)

 

【②『同性と愛を営む=ドブで生きる』なのか?】
押し掛け女房と化した今ヶ瀬に、どんどこ懐柔されていく恭一。
原作にもありましたが、『生活するだけ』なら、男(同性)同士のほうが圧倒的に楽なんですよね。
無駄に気を遣わなくていい、性別――脳構造の違いによる齟齬がほぼ無い、気が楽で、何より気が合う。

けれどそれは、あくまで、ふたりきりの部屋の中でだけでした。

部屋の外に出れば、恭一は今ヶ瀬と肩すら組めません。

あの(どう考えても普通のサラリーマンの一人暮らしには見えないインスタ映え待ったなしのオシャレな)部屋は、ふたりにとって、鳥籠のような揺り籠のような……シェルターにも似た、『現実』とはかけ離れた場所なんだろう。

そんな現実感のない部屋だったからこそ、ラスト、現実を見つめて独りで今ヶ瀬を待つ恭一の姿がうまく填まったんだと思います。

 

【③最後にあるのはささやかな、でも無視できない『変化』】
クライマックス近くで、恭一がハッテンしまくってるゲイバーに行く場面がありました。
男と男がナチュラルに睦み合う場所に、恭一は全身全霊全力で拒否りました。

だというのに。
その場面の後、彼は今ヶ瀬とさも当然かのように寝たのです。

(あまりにもナチュラル過ぎてびびった)
(一瞬、「何してんだコイツ???」って思いましたが)
(即思いつきました)

これはアレです。一昔前のBL漫画で801回見た表現です。
曰く、

「男が好きなんじゃない、おまえが好きなんだ!」ってやつです。

そう。恭一にとって今ヶ瀬だけが特別なんです。
男でも(いや男だからこそ?)恭一は今ヶ瀬と寝れるのです。抱くのも抱かれるのも抵抗感どころか求める。
と考えると、確かにしっかりまったりがっちりBLだなこの映画――って思いました。

しかし恭一が変化したというに、『猫』は逃げ出しました。
怖いからです。何が、って訳ではないのでしょうが。
ですが『恋の神様』はそれを許しません。
今ヶ瀬は恭一をいっときでも忘れようと他の男と寝ますが、無理でした。
今まではそれでうまく誤魔化して、凌いでいたのだろうけど、

無理でした。

もう無理になってしまったのです。
恭一から、この世でもっとも好きな人から、『与えられる』ことがあると知ってしまったから。

地獄ですね。
今ヶ瀬は苦しそうに泣きますが、でも、自分には『幸せ』に見えました。良いも悪いも正も誤もない、『恋愛』という業が見えた。

 

【まとめ:原作ファンとしての意見】
令和の世になっても天国か地獄かの二択の『漫画の実写化』。

原作は、『永遠の愛』というものがどこにもなさ過ぎて、逆に『永遠の愛』を期待して探し求めてしまいそうになる物語でした。
ですが映画を見て、「日々の積み重ねこそ永遠の愛になるのでは」と感じました。
それだけで花丸ってなものです。

あとは、恭一の頼りなさが失せて攻め攻めしさやべーな、とか。
(余談ですが、私の中の恭一さんは田中圭さんでした。あの方、ナチュラルろくでなしモテモテ男似合いすぎだろう)

今ヶ瀬の可愛さやべーな、とか。

女性たちの扱いがたまきちゃん以外ザツいな、とか。

(原作の単行本おまけの夏樹先輩と今ヶ瀬の1頁漫画の見たかった……)

(いい男だったのに下らない女になっちまって……って嘆く場面。めっちゃ笑いました)

いや今ヶ瀬ほんとに可愛いな??? とか。

お気に入りは映画観ながらポテチ食べる場面です。
ああいうシークエンスの積み重ねが、永遠の愛に繋がるんだろう、としみじみ。

そして『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』に引き続き、成田凌さんが輝いていた。
本当に輝いていた。

成田凌さんの今後のご活躍を期待申し上げます。