人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

マジックミラー(著・有栖川有栖)

JUGEMテーマ:ミステリ

「(前略)――私がマジックミラーのこちらから求愛している時、あの人はあちらで自分を見つめていたのかももしれません」

ここにもマジックミラー越しに人を愛した男がいる、と。

「マジックミラーに**が映ったんです」





有栖川先生の初期の作品です。やっと読めました。

湖畔の別荘で持ち主の妻が殺された。夫とその双子の弟が疑われたが、彼らのアリバイは完璧だった。
しかし被害者の妹は疑いが晴れず、姉の元恋人の推理作家・空知と共に、探偵の小桑に調査を依頼する。
という、アリバイ+時刻表モノです。

無理!!

イエあの時刻表が。ちまちましていて地図と同じくらい好きじゃないです。;;
しかし有栖川先生の非常に読みやすい文体のおかげで、なんとかついていけました――そして、最後の二重の大仕掛けに、思わず声を上げてしまいました。

二段重ねの仕掛け。本当に度肝を抜かれました。あそこのアレはアレだったのか、みたいな。


ところで推理作家・空知さんの担当である片桐さんは、作家アリスのアノヒトと同一人物、ということでいんでしょうか。
ラストの片桐さんの問いかけが辛かったです。知らないとは言え……これを尋ねられたときの彼の顔はどんな色をしていたんでしょうか。虚無、なのでしょうかやっぱり。
冒頭でとても仲良しな描写があったので、余計に辛いです。
マジックミラー越しに人を愛したという彼は、マジックミラー越しに人を憎み、殺し、いつの間にかマジックミラー越しにすべてを見抜かれる立場にあった、という皮肉がなんとも言えません。


そして姉が死んだと知り、大急ぎで列車を乗り継いで現場へと急ぐ妹さんの、途中のモノローグが切なかったです。
何でもないことのはずなのに、普段ならまったく気にしないことなのに、それらが突き刺すような不安を感じさせる。
また、訃報を空知さんに報せたときの悲しみの連鎖は読んでいて悲しくなりました。





作中に空知先生の講演があり、そこで『アリバイトリックの分類』がありました。(『九つの殺人メルヘン』でも適用されたアレですね)
巻末に作例が載っているので、全部読もうと思います