『確かにおっしゃる通りかもしれません。しかし野間は、病院でなく拘置所の、薄い毛布にくるまって死にました。
それを思うと、私一人が、死ぬまで金のかかったベッドで寝起きする気にはなれませんでした』
なんてドデカイトリック。うっかり感服しました。
館モノ屋敷モノ豪邸モノ。これらの小説には、必ず見取り図が作中や綴じ込みで挿入されています。
これを見るたびに、なんという才能だろうか……と圧倒されてしまいます。
絵を描くとは違う、立体図面。素晴らしいんだぜ。
話の中核でもある『塔の上から見下ろす花壇の図』は、あんな幾何学的な模様をどこから生み出すのだろう……としばらく見入ってました。
トリックに関しては……アリか、それはアリなのか! という感じ。
それもですが、やはり『花壇の謎』が印象的でした。情景を思い浮かべると、その冷たい綺麗さにゾクリとします。
そして今回は動機が現代にないものだと感じました。
私が今よりずっと若かった(幼かった?)ら、きっと理解はできなかったろうと思います。