人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

火村英生に捧げる犯罪(有栖川有栖著)

「(中略)――この程度では火村先生まではいかん。有栖川さん並みの憶測や」
「いつも見事にはずしてくれますもんね、あの人」
「アホ。そこがすごいんやないか。いつもはずすということは、実はすべてをお見通しなんかもしれへんぞ」
「はは、まさか。(後略)」


 

「有栖川さんが暗号を解いたこと、あったか?」
「記憶にありません」



「――というわけなんやが、まさか俺が捜査に乗り出して半日で解決するとはな。寒空の下を駆け回った甲斐があった。稀代の名探偵になった気分や。信じられん」


  

そんな感じのアリス大活躍の一篇が収録されている、『火村英生に捧げる犯罪』。
表題からして長編かな? と思ってましたが、

中編/『長い影』
掌編/『鸚鵡返し』
中編/『あるいは四風荘殺人事件』
掌編/『殺意と善意の顛末』
掌編/『偽りのペア』
中編/『火村英生に捧げる犯罪』
短編/『殺風景な部屋』
中編/『雷雨の庭で』

といったフルーツポンチでした。
『長い影』。
影の正体は、過去の自分のそれでしょうかね。
『鸚鵡返し』。
言葉遊びっぽくて好き。あと火村先生からアリスへの語りなので、これCDにしたら素敵かも
(ヲタ的発想kita*kore
『あるいは~』。
ちょっと怒った火村先生も素敵です。
『殺意と~』
皮肉が効いてて好き。何がどう幸いするかわかんないもんです。
『殺風景~』。
火村先生が安楽椅子探偵に!
『雷雨の庭で』
犯人に同情してしまった……(=△=)

そして表題作の『火村英生に~』ですが。
これ長編にしたら面白そうだなーとか思いました。
実は犯人は火村先生の過去を知っていて、そこからもう十年以上その片鱗も見せない先生の隠された過去を……みたいな感じで!
ほんと全然出ないですね先生の過去。
アリスのはちょまちょま出てるのにですなー。
急展開を期待していましたが、蓋を開けたら先生出向すらしてないし!
まあでも犯人の隠された意図はちょっと面白かったです。
でもってこれ、タイトルは『火村(略)』なのに大活躍(?)したのはアリス。だ、だまされたー。

そんなちんまいアソビゴコロ(狙ったのかどうかは知りませんケド)に敬意を表して、お星さまよっつ。


地味にときめいた台詞。
『雷雨の庭で』で、ふたりのことを嫌っている刑事さんが捜査のために現場のフェンスに登っている姿を見て。

「日向ぼっこをする野良猫みたいに並んで、何をしているんです?(後略)」


のらねこ三十路

なにそれかわいすぎる。(笑)