人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/フライト・ゲーム

BSで観ました。
2014年製作、アメリカのアクションスリラーです。

 

 

 

 

【あらすじ】
航空保安官のマークスは、過去のとある出来事から酒浸りの日々を送っていた。
いつものように一般客を装い、ロンドン行きの飛行機に乗った。
夜を迎え、マークスの携帯電話に差出人不明のメッセージが届く。
それは、「指定の口座に1億5000万ドルを振り込まないと、20分ごとに誰かを殺す」という脅迫文だった。

  

【ひとこと感想】
『密!!!』が詰まった模範的娯楽映画!

  

【3つのポイント】
①ハリウッドのド王道を突っ走れ。
②細けえこたぁいいんだよ。
③恐怖の描き方とそれに対するキャラの書き方。

 

【①ハリウッドのド王道を突っ走れ】

( ・ω・)<びっくりするほど脚本術のお手本!

これでもか! と娯楽の基本がみっちみちに詰まっていて、テクニックが大渋滞すぎて『密!!!』でした。見事なり。

手本①/大事な大事なコンセプト。

太平洋上空を飛ぶ飛行機内で殺人を予告されるという、いわゆる『一行で分かる面白さ』がありました。

手本その②/主人公のマークスがめっちゃ馴染み深い。

航空保安官というエリート的な立場でありながら、過去のトラウマで自暴自棄モード、いわゆる『現在は“殻”の中にいる人物像』です。
そんな彼が犯人に狙われ、徐々に忘れかけていた正義を思い出す。
そして自分を縛っていた過去と対峙し、乗り越える……
もちろん、トラウマの元となった『娘』に対する救済もありです。でら手厚い。

( ・⌓・)<この展開、どっかで見た……

( ・ω・)<進研ゼミ(※脚本術の教本)で見たやつだー!

と、胸中で大盛り上がりでした。

この脚本、絶対シナリオ入門とかSAVETHECATとか読んだ人が書いただろ。
ゆえに吸引力が非常に高い。いやー面白かった。退屈しなかった。

 

【②細けえこたぁいいんだよ】
もちろん教本そのまんまというわけではなく、ちょいちょい外してきます。

まず最初に起こった殺人はマークスによるものですし。
(不可抗力です。仕方なかったんや)

次に、第2の被害者の凶器がまさかの吹き矢でした。

( ・⌓・)<なんて???

めっちゃ笑いました。突然の吹き矢。しかもトイレにある操縦室を覗ける穴(?)から吹いた。どんな構造?

こんな感じでちょいちょい引っかかる点はあるものの、コンセプトと展開が面白いので細けぇこたぁいいんだよと英語で笑い飛ばされた気分に。力技にも程があんだろ。

 

【③恐怖の描き方とそれに対するキャラの書き方】
この映画の最大の特徴は、『主人公の追い詰められっぷりが容赦ない』です。

見えざる脅迫犯からのメール。
常に背後から監視しているかのような言葉がどんどん届きました。
緊張感がすごかった。

 

乗客がマークスに不信感を抱く状況。
味方であるはずの保安局からも「犯行を思いとどまれ! 今なら引き返せる!」と言われ、
テレビではさもマークスが犯人だと言いたげな報道が流れる。

募る疑心暗鬼、乗客の中に芽生える攻撃性、どんどんボルテージが上がり、ついには爆発します。
しかしさすがハリウッド映画の主人公、それらに対する反応は、

 

マークス:「俺に協力してくれたら一年間飛行機無料にする!」

   私:「ฅ(º ロ º ฅ) !?」

 

一筋縄ではいかねぇ。
周囲から「アル中の保安官め! おまえなんか信頼できるか!」と言われまくった末のキレ方が独特すぎた。

マークス:「そうだよ! 俺はクズだよ! でも乗客を守りたい気持ちは人一倍だよ!(乗客の一人を抑えつけながら)」

 

めっちゃ輝いてました。
追い詰められた時にこそ為人が出る……これもまた、進研ゼミ(※脚本術の教本)で見た気がします。
勉強になります。

 

【まとめ:伝えたいテーマは】
クライマックスでこの作品のテーマはセリフとして提示されていました。

 

「安全はこの国の最大の嘘だ」

 

( ・ω・)<そら2010年代に吹き矢で殺されるたぁ思わんわな。

 

でも今書いてて思ったんですが。

2021年4月現在だとこのセリフ、沁みますね。

『安全』などどこにも無い。
『自分だけは大丈夫』なんてことは絶対に無い。

 

画面の向こうのものだと思っていた『不運』や『不幸』が、
自分の死角に在る隣人だと、少し意識できた最近です。