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一応、前置きをしておく。
これは何冊かの古い本の話だ。古い本とそれをめぐる人間の話だ。
「わたし、古書が大好きなんです……人の手から手へ渡った本そのものに、物語があると思うんです……中に書かれている物語だけではなくて」
表紙の絵がとても印象的だったので、手に取って読んでみました。
あらすじ!
語り手の五浦は、本が読めない体質。そんな彼が亡き祖母の形見である一冊の古書を、ビブリア古書堂という古本屋に持っていくが、生憎店主は怪我で入院中だった。
店主・篠川栞子は、極度の人見知りで、けれど本に関することになると尋常ならぬ鋭さを見せる……。
派手な事件は起こらない、『日常系』ミステリです。
古い本が好きで、楽しそうに読み、好きな本のことになると生き生きと蘊蓄を語る女性、名作をモティーフに繰り広げられる、人の作る謎……。
ですが、どうしても、入り込めませんでした。orz
駄目だったのは、本のためなら躊躇いながらも人を騙す、躊躇いながらも利用する(語弊はありますがご勘弁を)、そして五浦の過剰な誉めっぷりでしょうか。いや言うほどキレ者じゃないんじゃないかな? 特に三話の、インターネット検索するところ。現代人なら思い至ると思うんですが。っていうかその推理に至った道筋があやふやで、どーも主人公探偵の特権=神(作者)から答えを教えられてます感が否めず。何より謎の答えが読めてしまって、驚きが少なかった。(←これは自分のせいですが)
ついでに言えば、脇役のクズたちが本気でクズでした。(←これはむしろ誉め言葉)
けれど雰囲気はとてもよかったです。
でもノースリーブの白いシャツは地味じゃないと思います。
読んだ感覚としては、京都の料亭のお澄まし(すまし汁)のような。
よくまとまっていて、薄口で、さらっと流れる感じです。
全四話の中で、いちばん好きなのは二話です。
作中に出てきた本で、読んでみたいなと思うのもこれ。
橋の下に住む男と、気は強いけれどごく普通の少女。常ならば接点なんてまるで無い二人ですが、一冊の本が、ひとつの物語が縁を結びました。
ひとつの物語が、その人にとって大切な物語になるには、読むタイミングも重要なんだろうな……としみじみ思いました。
続きは三巻まで出てるようで。
折角なので、のんびり読んでいこうと思います。
しかしタイトルに『栞子さん』とあるのに、作中で誰もその呼び方してないとはこりゃいかに。