人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/地獄の警備員

アマプラで観たホラー映画シリーズです。
1992年製作、日本のホラースリラーです。

 

 

 

【あらすじ】
総合商社に就職した秋子は、絵画取引部門で働いていた。
同時期に入った新人警備員・富士丸に目をつけられ、ストーカーされることになる。
秋子が落としたイヤリングの片割れを耳に着けて、密かに人を殺し続ける富士丸。
彼は元力士で、兄弟子と妻を殺したが精神鑑定で無罪になった殺人鬼だった。

 

【ひとこと感想】
殺し方が個性的な、地獄を歩む殺人鬼!

 

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①色濃く漂うあの時代の空気感
松重豊VS大杉漣
③殺し方が個性的

 

【①色濃く漂うあの時代の空気感】
ドラマが制作された1992年は、ギリギリバブルの頃でした。
タクシーのお釣りは受け取らず、海外の絵画を80億円で買いつけるような世界線です。
その時代特有のギラギラとした光が作り出す、色濃い影。

タバコの煙で淀んだ空気すら伝わってきて、またその時代で働く女性の「うわぁ……😧」となるような『苦労』を察せるような描写が続きました。

(とある人物が富士丸に対して「とにかく大きい。その分、知恵がない」という現代だったら絶対アカン発言があったのもまた時代です)

(そしてお助けアイテムが『テレックス(ファックスやEメール以前に使われた海外との通信手段)』だったのも以下略。ちなみにこれで初めて知りました)

そんな閉塞感をぶっ壊すのが、松重豊さん演じる地獄の警備員、富士丸なのです。

 

【②松重豊VS大杉漣
188センチメートルの長身に厳つい顔つき、ロングコートを纏い、昆虫のように無表情で何も語ろうとしない、その場に立っているだけで威圧感を与える(警備員は天職では???)富士丸。
彼は間違いなくこの映画のアイコンですが、他にびっくりするほど縁の下の力持ちだった人物がいます。

それが大杉漣氏演じるクズ上司・久留米です。

(ていうか『降霊』に引き続いてのパワハラ要員ですね大杉さん)

 

久留米:「女と同じだ、(絵画は)売れなきゃ意味がないんだ!」

 

と怒鳴り散らし、

 

久留米:「じっと見てくれるだけでいいんだヨ」

 

とヒロイン秋子の前でズボンをスッポーーンと下げ、
自分の部下を『俺の女』扱いして、自分より立場が下とみなした相手を脅す。

( ・⌓・)<……輝かんばかりに殺されるべきクズだ……

不快だけど笑いました。

そんな彼は、残業中の秋子のもとへ「忘れ物しちゃったー🌟」とわざわざ引き返して、懐からピンクのお花を出して乙女な瞳で見つめていたところを富士丸に襲われました。
それからは見事な死に様、否、殺され様でした。

バッドでぶっ叩かれ、ビクンビクン痙攣しながらブツブツブツブツつぶやき「アーッ」と叫び、地下に引きずられて「許してくださーい!!!」と叫んだけど感電されられ、四肢をバッキバキに折られて、あー死んだんだなーと思ったら黒いゴミ袋(この辺にも時代を感じる)を被らされた瞬間、

 

久留米:「アハハハハノヽノヽノ \ / \ / \」

 

と笑い出す男です。狂気と紙一重の喜劇がありました。お見事すぎた。

『スクリーム』のケイシーばりの立役者でしたね!💮

 

【③殺し方も登場人物も個性的】
けれど富士丸も負けちゃいません。
とにかく殺し方が個性的。

ソファの下にもぐった人間の足をつかんで前に押し出し、壁に頭をぶつけさせたり。
殺した相手をロッカーに詰めるのが好きらしく、最後の犠牲者はロッカーに閉じ込めて体当たりしてロッカーごとベコベコにする人です。それ自分も痛くないのかね。

この辺、説明が難しいので観てください。(投げた)

ただ、そんな個性的な殺人鬼が殺す人々も一筋縄ではいきませんでした。
なんか大体どっかズレてる。
なんせ、ヒロインが殺人中の殺人鬼に「どうしてこんなことするの!」「私は勇気があるわ、説明してちょうだい!」などと抜かします。

じんわりとしたクズとじんわりと狂気を感じる人間かしかいない、そんな『あの時代のホラー』でした。

 

【まとめ:『悪魔』ではなく『地獄』なのは】
最初にこのタイトルを知った時、あまりにB級でテンションが上がりました。
しかし疑問にも思いました。

何故『地獄の』なのか?
『悪魔の警備員』でも良いのでは。
『地獄』とは本来場所を示す単語ではないか。
そしてふと思いました。

『地獄』とは、主人公・秋子が生きる環境ではないか?

のっけから秋子の環境はクソでした。
明らかに料金をふっかけるタクシー運転手、社員なのに「そんな部署聞いたことない、適当なこと言うな!」と威嚇される、パワハラセクハラをかます上司、そんな上司にへいこらするくせに「ボクがあなたを守ってやるべきだったんです」とか抜かす同僚(個人的にはトップオブクソ)、比較的まともな人も基本的にうざい……

殺人鬼に惚れられる以前に、分かりやすくはないけど地獄だな、と思いました。

なんとも言えない気色悪さを感じられた作品でした。

 

富士丸:「俺のことを忘れるな」

 

そう言葉を残し、首を吊った富士丸の姿で幕を閉じました。
この場面もひどく印象に残る。
衝撃的で陰鬱、やっぱりこの時代のJホラーは良い。

 

 

次回は2月7日月曜日、
2019年の日本のホラーファンタジー
地獄少女』の話をします。

( ・ω・)<地獄つながり!

 

 

鳥谷綾斗