人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

創作四方山話:「本当に便利なセリフを発見してしまった……」

JUGEMテーマ:創作活動

 

せっかく創作に関するカテゴリがあるのに、記事がほとんど無いーー小説教室はほぼ鹿の話で終わってるーーのが物悲しいので、創作ネタを少々。
といっても記事タイトルのとおり、8割は真面目ですが半分おふざけです。
(割合おかしくね? というツッコミは野暮というもの)


大丈夫。この世には良い小説書きの指南書がたくさんあり、ツイッターでもネットでも少し検索したら創作テクニックがわんさか出てきます。だからここも真面目になる必要なんか無いのさフハハ。

 

( °∞°)<ひらきなおり。

 

 

初回は『セリフ』の話です。

 

小説に限らず物語において、
『登場人物のセリフ』
というものは、非常に便利なツールです。
ここのところ分析モードで作品を読んだり観たりするので、やたら再確認しています。

 


【例を出してみよう】
ベタベタな少女小説、あるいは少女漫画の1頁目、主人公の登場シーンを用意しました。

 

 

〈ex.1〉
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晴れた朝。ごく普通の中学生・春夏湖(はなこ)は学校に行くために通学路を歩いていた。
「もぐもぐ、おいしい」
春夏湖は重度のチョコレート好きだ。三度の飯よりもチョコレートが好きで、今も歩きながら食べている。授業中もこっそりつまみ食いするほどだった。
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〈ex.2〉
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「春夏湖、おはよー!」
「むぐっ? 秋冬海(あゆみ)、おひゃよぅ……」
「まーたチョコ食べてる! 通学中も食べるなんてマジやばいよね、春夏湖のチョコ好き!」
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ね。
地の文がいっさい無いのに、この春夏湖ちゃんがチョコ好きなのがスルッと入ってくるでしょう。
(ところで息をするように厄介な読み方の名前なのは単なる趣味です)

 

ついでに作中の『今』が朝で、通学中、つまり春夏湖が学生さんであり通学路を歩いている、ということも自然と理解ーー光景が浮かびます。

 


【しかし、こんなの今更な言及です】
物語を作るうえでは当たり前すぎて、こんなの指南書等にわざわざ書いちゃいません。
ですが『当たり前』だと思ってるものにこそ金が隠れているもの。
分析モードで読む・観るをしていると、この世にある物語がいかに計算で書かれているか分かって目から鱗がボロボロ落ちます。

 


【以上を前提にして、本当に便利なセリフを考えてみた】
このとおり、セリフというのは、登場人物の人物設定・現在の状況・心境が分かるものであるとベターです。
(さらにすべてが物語の結末を導くものであると尚良い)

 

それを踏まえて、「このセリフだけで上記みっつが読み取れて、さらに受け手の興味を引き、なおかつドラマ性がある」という空前絶後の怒濤の便利なセリフを考えてみました。

 

それは、

 


「いつ奥さんと別れてくれるの……?」

 

 

( ´∞`)<......

 


いかがでしょう。
このセリフを目にした時、脳裏に浮かびませんでしたか。

 

人物の設定が。
(女性ですね。それも結婚というものをリアルに意識する年代ーー二十代後半以降(※個人の感想です)で、既婚者の男性と付き合っている人物像が浮かびます)

 

状況が。
(会社でパソコンを叩いている時にこんな言葉が出てくるわけがない。あるあるで考えると情事の後。ひととき盛り上がったけど、男が家ーー奥さんの元に帰るために身支度を始め、それを見てぽろっと出た言葉なんでしょう)

 

心境が。
(愛さえあればと思っていた時期はとうに過ぎ、彼女は疲れています。「こんな不毛なことはもうやめたい、私だって人並みの幸せが欲しい、でも……」のアンビバレンツで二律背反でにっちもさっちも状態です)

 

見えてきませんか。
安っぽいモーテルの薄暗い部屋、タバコをくわえながらネクタイを締める男と、裸のままシーツにくるまりベッドに横たわっている女、湿っぽくてけだるい雰囲気とうんざりした空気が流れる光景がーー。

 

人物の設定と状況と心境を描き出し、
読者の興味を引き、
なおかつ背後にあるドラマを感じさせる、

 

マジで万能なセリフだと思うんですよ。「いつ奥さんと別れてくれるの……?」は。

 

( ・ω・)<いつか作中で使いたい。


ちなみに個人的に、このセリフを聞いて思い出すのは、ヒッチコックの『サイコ』の冒頭です。

 


【おまけ・秀逸なセリフが物語(と書いてセカイと読む)を作る】
『来る(映画)』の記事にも少し書きましたが、巧いセリフは彩りであり不可欠でもあります。
強烈なものだと、作品の印象を一読一瞬でガラリと変えてしまうこともある。
綾辻行人先生の『十角館の殺人』(記事あり)も、あのたった一言で世界は流転しました。

 

私が最近その感覚を味わったのは、1995年のサスペンスホラー映画・『セブン』のラスト。
サマセットの刑事のセリフ(ナレーションあるいはモノローグ)です。

 

ヘミングウェイが書いていた。
 『この世はすばらしい。戦う価値がある』
 ーー後半には同感だ」

 

これを見て、「あれっ?」と思いました。
この一文でセブンの印象が反転しかけたのです。
私はずっとこの映画を超弩級のバッドエンドだと思っていたのですが、本当は……もしかしたら……?  と思い始めました。
ここの詳しい部分はまた映画感想記事で。

 


いかがでしたか?
『頭の中でひねもすのたりと考えていることを文章にした』感が満載でしたが、自分としては、発見の連続な最近です。
さらっと作品を受けとるだけだった時には気づけなかったことがたくさんです。
またこんな感じで四方山話を書きたいと思います。お付き合いくだされば幸いです。

 

ちなみに次回は『タイトル』の話をします。