人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

予告犯(映画)

JUGEMテーマ:邦画


『それが誰かのためになるなら、どんな小さなことでも、人は動く』


予想外にも、静かな余韻を残す映画でした。

あらすじ。
ネット上に突然現れた、新聞紙の覆面をした男。
彼は『シンブンシ』を名乗り、裁かれぬ悪を自らの手で裁くーーリンチ犯行を予告した。
サイバー捜査官の吉野警部はそれを追うが、一向に手がかりはつかめず、政治家が標的にされたことをきっかけに、公安が動く。
身元調査で次々とシンブンシたちの正体が判明していく中、シンブンシは最後の予告をする。

最初はスピーディーな予告犯と警察との追いかけっこで、サスペンス映画でしたが、物語が進むにつれ、別の側面が見えてきました。
シンブンシの主犯ーーゲイツの過去が苦しい。
人を人と思わない人でなしに、潰されていく過程が丁寧で、息苦しくなりました。
生き苦しい人たちが、社会に復讐する話です。

『脳男』でも思いましたが、主演の生田斗真さんは、静の演技も動の演技も堂に入っていて素晴らしいです。安定感があります。
結局、彼に踊らされることを選んだ吉野警部。少々残念でした。
ネットカフェでの検挙の場面は、もうちょっとどうにかならなかったのか……。


シンブンシの真の目的が、人として真っ当だっただけに、このラストは悲しいです。
あんな目に遭い、社会に絶望して自ら消える道を選んだのに、ゲイツは人の道ーー友達を大切する人として当たり前の優しさを全うした。
それこそがゲイツの『社会への復讐』となったのではないのかな、と。

ゲイツのことを誰よりも想えばこそ、カンサイ、メタボ、ノビタもあんな証言をしたわけで。
生き残った彼らが生きていくために、涙を流しながら嘘をつく。
そこからのラスト数分は本当に胸に迫ります。
海辺の砂浜で、笑いながらメタボの夢を叶えるシンブンシたち。
もっと他の方法もあったのではないか、とも思いますがーー現実には厳しいよなぁ。

シンブンシーーゲイツの完全なる一人勝ち。
見事でした。