人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/オーメン(1976年版)

ツタヤで借りて観たホラー映画シリーズです。
1976年制作、アメリカのオカルトホラーです。

 

 

 

 


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【あらすじ】
6月6日午前6時、アメリカ外交官のロバート・ソーンは、我が子の死産を知らされる。
妻を悲しませないよう、ロバートは孤児の赤子を引き取る。その子は『ダミアン』と名付けられた。
すくすくと成長するダミアン。だが彼の5歳のバースデーパーティーで、乳母が「あなたのためにやるわ」と屋根から飛び降りる。

 

【ひとこと感想】
「ダミアンは悪魔の子か否か」への答え方が、悪魔的に鮮やかな作品。

 

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①劇的な死に様。
②ダミアンに対する疑念。
③「本当に悪魔の子か?」に対する答え。

 

【①劇的な死に様】
ソーン一家の幸せなメモリアルを流すこと十数分、この作品でもっとも有名なシーンが炸裂しました。

 

乳母:「Damian, look at me! ――It’s all for you!」

 

酒片手に歓談する大人たち、移動式遊園地で遊ぶ子どもたち、そして麗しき一日を過ごしていたソーン一家の目の前で。
ダミアンの乳母は、狂信的な愛を喚いて屋根から飛び降ります。
一度目にしたら焼きつくような、世界一衝撃的な首吊りです。

その他作中で死亡するのは4名。
ラストのロバートは描写がありませんでしたが、先の3名はいずれとも劇的、かつ劇薬的でした。

「ダミアンは悪魔の子だ」と主張する神父は、不穏な気配(このシーン、音楽の効果でめちゃくちゃ不吉でゾワゾワしました)に急き立てられた先の教会で。
屋根から落ちてきた避雷針に刺され、弁慶の死に様のように立ったまま死亡した。

母親キャシーは、夫から「逃げろ」という電話を受けた際に、新しい乳母ベイロックに突き落とされた。
飛び込み台のダイブのように勢いよく落ちて、救急車の屋根を突き破って。

ダミアンの出自を追う記者は、ロバートが放り投げた短剣を拾いにいき、ブレーキが甘かった車に激突され、頭部切断。
ここの流れ=荷台にあったガラスで首をちょん切られる場面は、『ファイナル・ディスティネーション』を彷彿させました。

 

全体的に、妙に死体、特にデスマスクを魅せるのが長かったように感じました。
まるで 『誰か』 に見せつけるような。そんな印象です。

 

【②ダミアンに対する疑念】
実はこの作品をきちんと観る前は、

「悪魔の子であるダミアンがなんか色々と暗躍して周囲を全滅させるんだろうなー😶」

という漠然としたイメージを持っていました。それこそ『エスター』のような。
ところがどっこい。いざ鑑賞してみると、

( ・⌓・)<ダミアン何もしてなくない?

母親キャシーに関する諸々は、ダミアンを『悪魔の子』と認定して、「そなたを守りに来た(`・ω・´)」とか言う乳母のベイロックの計らい&仕業でしたし。

他の不吉な描写は、動物園でキリンが逃げたりヒヒがハッスルする程度。

それは『ダミアンは悪魔の子である』という確証には成り得ない。

ベイロックや神父が誇大妄想狂で、父親が考えすぎだった可能性は?

ダミアンは、本当に悪魔の子か?

こんなに可愛い『子ども』なのに――この疑問は最後の最後まで続きました。

 

【③『本当に悪魔の子か?』に対する答え】
ダミアンの周囲にいる大人こそが悪魔だった――というオチになる心構えもしていましたが。
けれどその疑問は、ラストシーンで見事に美しく回答されました。

警察官に射殺されたロバートの葬送シーン。
大統領、と呼ばれる夫婦と共にいる、喪服のダミアン。
彼はふいっと振り向き、『こちら』を艶々の飴玉のような瞳で見つめます。

そうして、真っ白な、柔らかそうな、天使の頬に浮かぶ笑み。

これが答えでした。
鳥肌が立ちました。これはすごい。
余計なセリフ、説明などなくても、この演出で観客には伝わる――そんな観客への信用を感じました。

この場面、「子役には絶対に笑うなと言った上でスタッフが笑かしにかかった」という裏話も込めて大好きです。
(だからあんな絶妙な笑い方だったのか)

 

【まとめ:あの強烈な死に様は】
上記の答えを受けたら、①でうっすら引っかかっていた点も腑に落ちました。

登場人物の死に様です。一枚絵のように強烈で、じっくり見せつけるような印象の。

あれはまさに、

It’s all for “you”.

つまり 『悪魔』 に捧げるため――なのかもしれません。

(なので最初の乳母が言ったこのセリフ、自分なりに訳すと)

(「あなたに捧げるわ!」ですかね)

(と、ちょいと翻訳家を気取ってみます😌)

 

 

【おまけ:今日の記事の題材が『オーメン』になった理由】

 

オーメン

 

今日が6月6日だから。
ハッピーJune sixth。メリーダミアン。(てきとう)

 

次回は6月13日月曜日、
1968年制作、アメリカのオカルトホラー、
ローズマリーの赤ちゃん』の話をします。

(   ・ω・)<エクソシストポルターガイストオーメンときたら……

(`・ω・)<これしかないと思いました!

 

 

鳥谷綾斗

映画/サスペリア(1977年版)

ケーブルで観たホラー映画シリーズです。
1977年制作、イタリアのゴシックホラー映画です。

 

 

 

 


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【あらすじ】
バレリーナを志すアメリカ人の少女、スージー
ドイツのフライブルグにある名門校に入学した。
雷雨の中、女生徒のパットが謎の言葉を残して学園を出ていくのを見かける。
翌朝、パットの悲惨な死体が発見される。

 

【ひとこと感想】
絵の具めいた血糊、作り物めいた色彩美、惨殺アトラクション。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①冒頭のド派手な惨殺。
②ファンタジック惨殺。
③絵の具を飲んで絵の具を吐く人々。

 

【①冒頭のド派手な惨殺】

 

「決して、ひとりでは見ないでください――」

 

というキャッチコピーが有名な本作。普通に一人で観ました(謎の反骨精神)。

妙に可愛いフォントのオープニングから嵐の夜に彩られた鮮やかな赤い外壁の学園、濡れネズミになる美女ヒロイン。
ホラー映画としてバッチリなお膳立て。
そして期待を裏切らず、凄惨な美女の殺害シーンがやってきます。

ヒロイン・スージーとすれ違いに学園を出て行ったパット。
彼女は友人のアパートへ避難します。
不安そうに青ざめるパットは、ふと窓の外に気配を感じます。

外は雷雨。ここはアパートの最上階。
何もいるはずはない。
けれど視線を感じる。黒い気配を感じる。
窓の外を覗き込むと、……

ここからが凄まじかった。窓が割れる、否、毛むくじゃらの手が窓を突き破る音が殺戮開始の合図です。

ガラス窓に押しつけられて歪む美女の顔面。
胸部を開いた肋骨から垣間見える心臓。
ステンドグラスの穴から垂れ下がる長いブロンドヘアー。
それを突き破り、ぶら下がる血まみれの首吊り死体。

なのに、『血』はひどく作り物めいていて。
ものすごく趣味の悪いオブジェのような、気色悪い美しさがありました。

 

【②ファンタジック惨殺】
舞台である学園の内装は本当におしゃれです。
さらに赤青緑の照明が、原宿の映えカフェっぽい『非日常さ』を演出しています。

その中で繰り広げられる残酷描写――
細長い米粒が蠢いているような、大量にわいた蛆虫。ぶちぶちと踏み潰される音。
盲導犬に食い殺される盲目のピアニスト。
スージーのルームメイト、サラは真相に肉薄したためか謎の人物に追いかけられ殺される。

これらも、『リアリティ』よりも『非日常さ』に重きを置かれていました。
言い方は悪いのですが、『残酷なお人形遊び』みを感じました。

これは絶対に、 「血糊がどう見ても絵の具」 なせいです。(断言)

 

【③絵の具を飲んで絵の具を吐く人々】
目を背けたくなる瞬間はあれど、「絵の具っぽい血糊」の効果で安心して殺戮アトラクションを楽しめます。

たとえばピアニストの首が噛みちぎられる場面。
口がパクパクする犬のぬいぐるみで首を挟んでいるんだろうなー、このワンちゃんは普通にごはんを食べててそれに水音のSE入れているんだろうなーウフフと思いました。(※推測です)

次にサラが殺害される場面。
必死に学園の危険性をスージーに訴えますが、スージーはおねむ。( ˘ω˘ )スヤァ…

覆面の男(志村うしろ案件)に追いかけられて、緑に染まった寝室から真っ赤に染まった廊下、青ざめた屋根裏を経て小部屋に逃げ込み、掛け金を下ろします。
けれど覆面はドアの隙間からナイフを差し入れ、掛け金をペチ……ペチ……と叩きます。「こんな施錠はすぐにでも破れる」と脅し、サラを弄びます。

 

サラ:「Oh…Ah…!!」

 

怯えるサラ。マジで怯えるだけだったサラ。

( ・ω・)<何かあるやろ武器が。

あなたの隣にある家具でドアを塞いでもいいと思うよ。
などと思っていたらサラは小窓から脱出、しかし謎の紐に絡まって追いつかれて殺されました。
やはりそこでも『絵の具な血糊』。

からの、場面変わって、貧血予防に飲まされていた赤ワインを洗面台に捨てたスージー
これも妙に絵の具みがありました。ワインってそんな手で洗面台をこすらなきゃ流れないものだろうか。

もしやこの人たち、
絵の具を飲んで絵の具を吐いてる……?

 

 ( •᷄ὤ•᷅)<……?

 

という大暴投な感想が浮かびました。

 

【まとめ:ひとりで見てください】
補足しますが、『どう見ても絵の具な血糊』について自分はまったく文句はありません。

好みとしてはこっちの方がずっと好きです。ニセモノ上等。法螺万歳(ホラーなだけに)。ありがたい。安心して、『特に悪いことをしていない人たちが惨殺されるアトラクション』を楽しめるからです。

創作物には、必要なリアリティと不必要なリアリティがあるってやつです。

閑話休題
全体的には『観賞する劇薬』という感じでした。
背景のレトロ可愛さ、ヒロインたちの可憐さ、そして死体や校長である『魔女』のグロテスクさ。
すべてが強烈に印象に残り、憧憬が募る。

是非とも部屋を暗くして、スマホの電源も切って、『ひとりで見て』、この世界観に没頭していただきたいです。

 

 

【余談①お気に入りの場面】
蛆虫が発生したので、広い練習室で生徒全員が眠る場面。
消灯した瞬間、パッと写る影絵が綺麗でした。舞台を観ているようだった。

 

【余談②同名の漫画雑誌が好きでした】
子どもの頃、『サスペリア秋田書店刊)』というホラーやミステリーの漫画ばかりが載った雑誌が大好きでした。

近所のスーパーでよく立ち読みしました。(当時小学生だったのでご寛恕ください)
2012年ごろに廃刊になりました。心惜しいことです。
単行本も持っていたのに、いつの間にか無くなっていた。
そのスーパーもとっくに潰れました。……。

少々郷愁的な気持ちになりつつも、
大好きだった雑誌の名前の元ネタの作品に触れられて嬉しかった。そんな感じです。

 

 

次回は6月6日月曜日、
1976年制作、アメリカのオカルトホラー、
オーメン』の話をします。

 

( ・ω・)<6月6日なので!

 

鳥谷綾斗

映画/海底47m

アマプラで観たホラー映画シリーズです。
2017年制作、英米合作のサメ映画です。

 

 

 

 


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【あらすじ】
メキシコに旅行にきた姉妹・リサとケイト。
失恋したばかりの姉のリサを元気づけるため、ケイトはケージダイビングに誘う。旅先で知り合った地元の青年に誘われたのだ。
サメを誘き寄せるための撒き餌で赤く染まる青い海に、2人が入ったケージは沈んでいく……

 

【ひとこと感想】
恐怖ポイントがサメじゃなかった、息が苦しくなるサメ映画。

 

※全力ネタバレです。
※ネタバレなし鑑賞を強くオススメします。

 

 

【3つのポイント】
①青と赤の綺麗なコントラスト
②対照的な姉妹
③臆病な姉は変われるか?

 

【①青と赤の綺麗なコントラスト】
サメ映画と言えば、海の美しさも見所のひとつです。
今作で瞬間的かつ強烈に心を奪われたのは、その海の青さとそこに流し込まれる『赤』の対比。

サメを呼び寄せるために撒かれた撒き餌の『赤』。
リサの手、ケイトの足の出血の『赤』。
皮膚が剥がれたリサの足の『赤』。
サメを追い払うための発煙筒も『赤』でした。

この作品のレビューによると、海中では血は赤ではなく緑に見えるそうですが映画なので。
青に対する鮮烈でくすんだ赤がとても映えていました。

海も空も青くて天気は上々、潮風が髪を乱す解放的なロケーションから一転、息の詰まる海底へと場面が変わっていくのも美しいコントラストでした。

 

【②対照的な姉妹】
主人公は正反対の姉妹。
引っ込み思案な姉のリサと、社交的な妹のケイト。

この姉妹のやりとりもポイントです。
フラれた際に「退屈な女だ」と言われたリサが、腹癒せにサメの写真を撮るという、一見すると「なんで???」となる流れ、ミョーに納得できます。

アクシデントでケージが沈んでも、パニックに陥るのは姉で宥めるのは妹。
そんな妹に、リサはコンプレックスを募らせていました。

 

ケイト:「競争なんてしてないわ」
リサ:「あなたはね」

 

たぶん、姉妹が逆だったら生じなかった『感情』が垣間見れて、うんうんと頷きました。
姉と妹は親友でありライバル。年が近ければ特に、ってなもんです。

ケイトは率先して状況を打破しようとしたけれど、エアがどんどん少なくなります。
それを見てリサは一念発起、ケイトに教わって自ら生き残るための行動をします。

サメと窒息死、ふたつの絶望が傍らに控える渦中で、
リサは変わろうとしたのです。

 

【③臆病な姉は変われるか?】
ふたりを嘲笑うかのようにピンチが次から次へと舞い込みます。
エアの残りは少ないしケージにウインチをつけに来た青年もサメにあっさり殺されるし、なんとか引き上げられたけど途中でケーブルが切れて(どういう管理してんの?)逆戻りしたり、海底とケージに足を挟まれたり。

しかし奮起したリサは強かった。
ざっくり切った手から真っ赤な血が流れ続けても気にも留めず、海底とケージの隙間から足を引き出し、助け出した妹を抱えて水面を目指します。
サメも追いかけてきました。
発煙筒をつけた瞬間、6メートルはあるらしい巨大なサメが3頭現れたのには肝が冷えました。
発煙筒で追い払い(ここで3本のうち1本を落とすという細かい絶望つき)ながら、水上に出て船に向かって叫びます。
なんとか船にたどり着いた瞬間、サメがリサを襲います。

しかしリサはサメの目玉を攻撃して回避し、
妹と一緒に船上で治療を受けることできました。

ああ、助かった。

空の澄んだ青を目にし、そう思いましたが――

リサの手から流れる血が、空中に滲んでいることに気づきました。
まるで水中のように、青の中に溶けていく赤。

……ここの場面の切り替え、最高でした。

( ・ω・)<本気で怖かった。

空の澄んだ青から一点、海底の暗鬱な青へ。
海底のケージの中で、独りきりのリサが笑います。

 

リサ:「やっと助かった。うふふあははは、
    助かったわケイト、BCDを使ったの。助かった……」

 

すべては窒素酔いを起こしたリサの、幻覚だった。
リサは沿岸警備隊に助け出されますが、
ケイトの姿はどこにもなく、そのまま青と赤の海底は幕を閉じました。

 

 

【まとめ:意外で厳格で残酷な結末】
ホラーに限らず、映画でピンチに対峙した主人公というものは『変化』『成長』するものです。

なのにこの作品、「そんな都合のいいことあるかい」と真っ向からアンチテーゼをぶちかましてきました。
火事場の馬鹿力があろうとも、人間は簡単に有能にはなれないし、人喰いサメに立ち向かうことはできない。

ずっと助けられてきた側だった人間が、一瞬で助ける側になることはない。

サメよりもそれがもっとも恐ろしかった。いわゆる『現実』ってやつです。

やはり普段から知識と筋肉をつけておくべきだなぁと思いました。
(※絶望のあまり明後日の方向へぶっ飛んだ感想)

 

 

次回は5月30日月曜日、
1977年制作、イタリアのゴシックホラー映画、
サスペリア』の話をします。

 

鳥谷綾斗

映画/ポルターガイスト(1982年版)

ケーブルテレビで観たホラー映画シリーズです。
1982年制作、アメリカのSFXホラーです。

 

 

ポルターガイスト (字幕版)

ポルターガイスト (字幕版)

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【あらすじ】
5人家族のフリーリング一家は、新興住宅地の『クエスタ・ベルデ』に住んでいた。
ある夜、5歳の次女キャロル・アンが砂嵐のテレビを相手に会話をする。
その日から騒霊現象(ポルターガイスト)が頻発し、とうとうキャロル・アンが姿を消した。

 

【ひとこと感想】
ディズニーのアトラクション的『隣人』トラブルホラー。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①おどろおどろしい作品かと思いきや
②油断したら怖かった
③でもやっぱりアトラクション

 

【①おどろおどろしい作品かと思いきや】
私は、幼少の頃からホラー映画に親しんでいました。
(突然の履歴書の自己PR欄み)

結構な数を摂取してきましたが、いかんせん、ほとんど内容の記憶がフワフワのアヤフヤです。
なのでこの『ポルターガイスト』も『エクソシスト』とごっちゃになってました。

( ・ω・)<……キャロラインが出るのどっちだっけ?

ってな有様です。
(キャロル・アンの名前も音で覚えていた有様)
ゆえにこの作品、漠然と恐ろしくおどろおどろしいイメージを抱いていたのですが、

( ・ω・)<意外とそうでもないな……。

ってな印象に変わりました。

冒頭は怖かった。
開始数分で本題に入る、つまりこの作品の象徴である『キャロル・アンが砂嵐が映るテレビと交信する』シーンでした。見習いたいこのテンポ。

エクソシスト』の500倍エンタメでした。
とにかく騒霊現象のテンションが高い。大暴れです。隠れる気がまったく無い。

心霊現象の研究家なる方々が登場し、その人たちが「騒霊現象を撮影した経験がある。低速度で撮影して、物体が7時間かけて2メートル移動する様を撮れた」と得意げに説明するのがもはやフリにしか見えませんでした。

何気にダースベイダーがいたりと遊び心も満載。

椅子がすべり台を滑るように移動するのを見て、「真空の中で引っ張られてるみたーい🌟」と母親のダイアンもはしゃぎまくります。

(ていうかこのオカン、16歳で長女出産したんかい)

 

【②油断したら怖かった】
そんなアダムスファミリー的な世界観だったのが一変。

 

キャロル・アン:「あの人たちよ」

 

嵐の夜、家にいる幽霊――キャロル・アンがそう呼ぶ存在が牙を剥きます。
そうして彼女は異空間に連れ去られしまいました。

(このクローゼットに吸い込まれるシーン、「観たことある!」と記憶を刺激されました)

(余談ですけど、やっぱりホラーにおいて『ブラウン管のテレビ』っていいですね)

(中に何か入ってそうな感じが。薄型テレビも『穴』感があっていいんですけど、オツなのはやはり前者です)

前半のコミカルさが嘘のように、ガンガン入る恐怖描写。
お気に入りは、超心理学の専門家・レシュ博士の助手が見せられた幻覚です。

食べ物を探しに行った先の台所で。
ナメクジのような動きでうごめく生肉。
肉に集る蛆虫。
洗面所で吐き出す。鏡を見る。自分の顔が焼け爛れている。溶けた皮膚が重力に負けて指に掻きむしると、……ジュクッ

ここだけ世界観が『死霊のはらわた』なんよ。(強調)

油断していたのでダメージを負いました。無念です。気持ち悪かった。

 

【③でもやっぱりアトラクション】
荒ぶる霊は、輝く生命力を持つキャロル・アンに固執し、さらに普通の霊とは段違いに恐ろしい敵が彼女を引き摺り込もうとします。
霊媒師タンジーナの力を借り、なんとかキャロル・アンを取り戻します。

しかし霊たちは当然あきらめませんでした。
最大出力の騒霊現象。ダイアンもパンツ丸出しで天井まで引き上げられたりブラックホールクローゼットが再び現れたりします。
あまりのしつこさに、

 

キャロル・アン:「もうイヤ……」

 

この言葉がすべてを物語っています。
ここから死霊パーティー。棺桶に入ったミイラがバカスカ生えてきます。
なんとか車に乗り込んで逃げようとしますが、霊は――否、『家』はあきらめません。

 

ロビー:「家が追ってくるよ!」

 

( ・⌓・)<それはもはやディズニーの世界観では!?

アトラクションにしたらめっちゃ面白いんじゃないかな、と思いました。

最後は家自体がブラックホールクローゼットに吸い込まれ、
一家はほうほうの体でホテルの部屋に入ります。心底うんざりした顔で。

ラスト、部屋からテレビを出す動作が、とてもシュールでした。

 

【まとめ:物語の内容よりも怖いのは】
騒霊現象の原因は、『墓場を宅地にする際、墓石だけ移動させて棺桶はそのままにした』というもの。
(ある意味『隣人トラブル』)

ひどい話です。「なんでそんなことするの……?」とシンプルに疑問でした。
『なんでそれでOKだと思えるの? 倫理観どうなってるの?』的な。

これはお国柄の違いなのか。
いやたぶん違う。

母親ダイアンにも、『倫理観どうなってんの場面』はありました。
それは冒頭、子供部屋で飼っていた小鳥が死んだシーン。
それを見つけた彼女は小鳥の死体を、 トイレ に流そうとします。
キャロル・アンが見つけて埋葬しますが、棺桶は葉巻の空き箱で、実に適当な弔いでした。
そのキャロル・アンも、数秒後には「金魚飼いたい!」と笑い、
小鳥のお墓は、結局プールを造設するために掘り起こされ、
そのままゴミのように潰されました。

つまりそういうことか。
『あの人たち』――はるか昔からこの土地で眠り続けた人々が怒り狂う気持ちも分かる。
そう納得し、この作品の恐怖ポイントはココだと思いました。

……ですが。
なんやかんやでこの映画で一番恐ろしいのは、

後日談。

でした。
調べるとめちゃくちゃ怖かったです。

 

 

次回は5月16日月曜日、
2017年制作、英米合作サメ映画、
海底47m』の話をします。

 

 

鳥谷綾斗

映画/キャリー(1976年版)

ケーブルテレビで観たホラー映画シリーズです。
1976年制作、アメリカの青春オカルトホラーです。

 

 

 

 


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【あらすじ】
狂信的な母親に育てられ、学校ではいじめられる内気な女子高生、キャリー。
クラスメイトの前で初潮を迎えた彼女は、強い念動力に悩まされる。
クラスの男子に誘われ、高校のプロムに出ることになったが……

 

【ひとこと感想】
鏡付きのサンドバッグが皆殺しに至るまで。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①キャリーの人物像。
②そこまでやるか的いじめ描写。
③恐ろしい『母親』の呪い。

 

【①キャリーの人物像】
この映画の特徴は、

( ・ω・)<倫理観どうなってる?

と言いたくなる悲惨で陰湿ないじめ描写。

特に冒頭の体育(球技)の場面では、「キャリーを狙うのよ!」で古い記憶を刺激されて ( •᷄ὤ•᷅) になりました。体育の球技嫌い。

からのシャワー室で、『初潮でパニクるキャリー(しかも全裸)に笑いながら生理用品を投げつける』場面。

加えてパートナーがいないとプロム(卒業パーティー)に参加できないというぼっち皆殺しシステム。

正直な感想。

( ・⌓・)<キッツ……

以前、友人氏とこんな話をしました。

鳥谷:「ホラー観てると、昔のアメリカの高校生の倫理観どうなってんの? って思うことが多いんですよ」
友人:「それなら『キャリー』がいっちゃんヤバいよ」
鳥谷:「まじか。観る」

友人氏の所感に寸分の狂いなし。

そんな日々に泣き叫ぶキャリーは、踏み潰された花に似た少女です。
全裸でも情欲をそそられる前に痛々しさを覚えるような、下がり眉の女の子。
そんな彼女は、クラスの男子・トミーにプロムに誘われます。
(生まれて初めて自分を飾るキャリー、とても素敵な笑顔で可愛かった!)

そしてそれは、彼女をいじめたスーの計らいでした。

 

【②そこまでやるか的いじめ描写】
鑑賞する前は、スーはキャリーに罠を仕掛けたのだと思いました。

「自分の彼氏をいじめた相手にあてがう……? そんなん本気になったところを笑う精神的なアレやん、漫画で500回は見た……」と疑いの目を向けましたが、スーは本当に反省して、キャリーのためを思ってトミーにお願いしたのです。

(これは『boyfriend』を『彼氏』ではなく『男友達』と捉えるべきだった)

てっきり四方八方敵だらけかと思いきや。
学校のコリンズ先生といい、少なくてもキャリーの味方はちゃんといたのです。

けれどこの物語の結末は皆殺し。
何故なら、数少ないキャリーの味方の親愛をはるかに上回る悪意が存在していたからです。

いじめっ子・クリス。
彼女はキャリーに恥をかかせる――否、完膚なきまでに自尊心をズタズタにしようと画策します。

そのために養豚場に忍び込んで、豚を一頭殺しました。

( ・⌓・)<そこまでするか……?

呆然としました。ペンキじゃダメだったのか。
底知れない執拗さを感じました。何がクリスたちにそうさせるのか。

 

【③恐ろしい『母親』の呪い】
クリスたちの悪意にも眩暈がしますが、さらに最悪なのがキャリーの母親。
キリスト教っぽい何かを狂信し、それをキャリーに押しつける――それでもキャリーが母親に甘えるそぶりを見せるのがキツい――泥沼の共依存親子です。
『女になるのが罪、性交も罪で、生理と出産とニキビは罰』と教える宗教です。冷静に考えておかしいと思わないのかシンプルに疑問。

けれど、倫理的や論理的、心情的や世間的におかしくても、キャリーにとっては母親は絶対の存在でした。

 

母親:「笑いものにされるのよ」

 

だから、ステージ上で豚の血を浴びせられた時、キャリーは思い込んだのです。

“みんなが、わたしを笑いものしている” と。

本当はコリンズ先生は心配していた。スーはクリスを止めようとしていた。(早とちりした先生に追い出されたけど)
なのにコリンズ先生も自分を嗤っていると――認知の歪みを起こした。

笑いものにされている。
だってパーティーに行く前、ママがそう言ったから。
ひどい。許さない。みんな死ね。

そうしてキャリーは、味方もろとも皆殺す、悪魔になってしまったのです。

 

【まとめ:キャリーは悪魔か?】
鑑賞し終わると、母親もクリスも、キャリーに投影していたように思えます。
自分の心に宿る、意地が悪くてどうしようもない、クソッタレな悪魔を。

母親は、「性交は罪なのに、酔っ払った旦那に手を出されて愉悦を覚えた」自分に罪悪感を抱いていた。
その行為の結晶であるキャリーに、それをぶつけただけだった。

クリスは、いじめた罰としてハードトレーニングとプロムへの参加禁止を命じられ、それに反抗したけれど友達の同意を得られなかった苛立ちを抱えた。
その原因(※思い込み)であるキャリーに、八つ当たりしただけだった。

身勝手なものです。自分の悪意は自分で処理しろって話です。

つまりキャリーは、
『鏡が付いたサンドバッグ』だったのです。

そして一番恐ろしくて悲しいことは、スーもキャリーを『悪魔』と認識してしまったこと。
夢の中で花を手向けようとしたらキャリーに襲われて魘される……悲しい。
せっかくの親愛が悪意でズタズタにされるのは、悲しい。

最後、母親が崇拝する『神様』の偶像が、バカにしたような表情(どこ見てんだアレ)だったのがまた腹が立ちます。

「所詮、親愛は悪意には勝てないのだ」と言われているようでした。

( ・ω・)<……

 

次回は4月25日月曜日、5月2日月曜日、
1982年制作、アメリカのSFXホラー、
ポルターガイスト』の話をします。

 

鳥谷綾斗

映画/リカ 自称28歳の純愛モンスター

レンタルで観たホラー映画シリーズです。
2021年制作、日本のサイコホラーシュールコメディです。

 

 

 

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【あらすじ】
山中で胴体だけの死体が発見された。
それは3年前に連続殺人犯・『リカ』に連れ去られた本間隆雄だった。
刑事・奥山は自らを囮にして、リカへの接触を図る。
奥山の恋人である孝子は彼を心配し、同僚刑事の尚美に相談するが……

 

【ひとこと感想】
王蟲の目玉かよ!」とツッコんで「シャッ!」が強烈すぎたサイココメディ。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①更なるスキルを得たリカちゃん。
②「惚れたら、終わり」ではなくないかと思ったら。
③『皆』と『リカ』の違いは?

 

【①更なるスキルを得たリカちゃん】
リカちゃんに対する自分の見解(というかラブレター)は、過去の記事に書いております。

 

word-world.hatenablog.com

 

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お裁縫やハーバリウム作り、殺人に誘拐に果ては生体解体と色々ハイスペックなリカちゃん。
今作では 3Dプリンター という新たなるスキルを得ていました。

キッカケは、奥山刑事が買った真っ赤なハイビスカス。
慎ましい交際を望む彼女に、奥山刑事は写真を送ります。
リカちゃんはその写真を3Dプリンターで印刷して着色し、ハイビスカスを受け取りました。
さらに電話で特徴を聞いて似顔絵を書き、3Dプリンターで印刷して奥山刑事のフィギュアまで作ってました。愛のなせる技スゴすぎんか。

(奥山刑事フィギュアの顔は雑なのに、リカちゃんのはやたら整っていたのが妙にツボでした)

(でもそれは「愛する貴方がどんな容姿でもリカはいつだって綺麗にしているね」というメッセージかもしれない)

「殺人犯じゃなかったら重宝された人材だったろうなぁ」というこの惜しさ、『SAW』シリーズのジョン・クレイマーにも通じますね。

 

【②「惚れたら、終わり」ではなくないかと思ったら】
このキャッチコピー、最初は違和感を覚えました。

何故ならリカちゃんは、口裂け女さそり座の女と同じ、圧倒的に『追う女』だからです。
ゆえに「惚れられたら、終わり」なのでは? と思っていたのですが、原作からの改変部分を見て納得しました。

なんとリカちゃんに惚れる男が現れたのです。

奥山刑事はリカの持つ『愛』――「大切な家族、特に子どもには寂しい思いをさせない」に共感を覚え、幻を見るほど、夢でキスを交わすほど、リカという女性に囚われてしまったのです。

 

奥山:「(メールの返事が遅いリカに対して)
    何してんだよ、リカ……まさか他の男とってことは……」

 

(もう完全に惚れてるやん)

(ずっとドラマを観てきてすっかりリカちゃん贔屓になってしまった自分は、素直に「よかったね!」と思いましたとも)

(でも同時に「ずっとリカのこと考え続けて脳がバグったんやろなぁ」とも思った)

ちなみに原作は、佐々木希さん演じる梅本尚美さんが主人公です。
(奥山刑事は早々に退場し、そこからヒントを得てリカに追跡する、女同士の戦い的な展開)

この改変はすごく面白くて良いな――と舌を巻きました。
主人公の迷走というものは「待て待て落ち着け」とハラハラ感がありますし。このまま奥山刑事とのバトル展開かと思いきや。

なんと奥山刑事、フツーに死にました。

 

【③『皆』とリカちゃんの違いは?】
そこから原作どおり、女性たち(孝子と尚美)のターンです。めっちゃ優秀です。

拉致されて拘束された孝子は、目の前にいる悍ましいモンスターを否定したくて否定したくて否定したくて必死に言葉を紡ぎますが。

 

リカ:「だったら、人間はみんな可哀想ってことね」

 

モンスターは優美に微笑み、そう返します。
このやりとりは原作のテーマを思い出しました。

真っ当な精神を持っていても、
愛すること、愛されることへの強烈な飢えを抱けば、
それを満たせる相手を見つければ、
誰だって『リカ』になり得る。

『皆』とリカちゃんの違いなんて、髪の毛ひとすじ程度。
冷静ぶって物語を俯瞰する自分だって、何かを間違えたら、誰かと出逢ったら……と自省しました。

したんですけど。

( ・ω・)<すまん。

( ・ω・)<いくら愛に飢えて(略)相手を見つけても、


( ;ω;)<外壁をスパイダー登りはできんし空も飛べんわ!

 

【まとめ:最後の残った感情は『混乱』でした】

( ;ω;)<どういう感情になればいいんだよ!?

鑑賞後の所感はこれです。

予告でガッツリ出てますが、リカちゃん、警察の包囲網から逃れるために、空を飛んだりスパイダーマンばりに「シャッ!」と言いながら壁を登ったりします。

 

  ヽ(˙ ꒳ ˙ ) / \ シャッ!
   \ヽ \\
     \\\
      \\
        \
         、;'.・

 

もはや走行中のタクシーに追いつくだけじゃ足りないのです。どこまで進化する気だ。
ていうか腕にあるアザ(ドラマシーズン2を観たらすごく深い意味がある)が興奮して赤く光るという謎の追加設定、

( ;ω;)<王蟲の目玉かよ!!!

と、思わず座布団をハタきました。こんなツッコミ、人生で初めてだわ。

途中までは真っ当なホラー、クライマックスからカオス。トンチキっぷりも含めてめちゃくちゃ楽しい映画でした。
ぜひ、気の合う仲間とストゼロストローとポテチのしあわせバターキメながら観てください。ストレスとか飛ぶぞ。

 

【備考:唯一の不満点】
以下、『リターン』のラスト大好き芸人の戯言です。

やはり奥山刑事は死亡ではなく、胴体のみの生存状態で発見された方がよかったのでは。

それを最後は孝子が引き取る……にした方が、この作品の根底に流れる「女(概念)は誰でもリカになり得る」に即したような気がします。

永遠に成長しない赤ん坊でも愛し続ける、狂ってはいるけど理想的な女。

それこそが『リカ』なので。

(でも映画のリカちゃんはラストに目覚めたしなー)

(映像化スタッフ的にリカちゃんは唯一神なのかもなー)

(というかあのラスト、お約束すぎて盛り上がりました。王道サイコー)

 

次回は4月18日月曜日、
1976年制作、アメリカの青春オカルトホラー、
『キャリー』の話をします。

 

 

鳥谷綾斗

映画/生き人形マリア

アマプラで観た映画シリーズです。
2014年制作、フィリピンの人形ホラーです。

 

 

 


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【あらすじ】
セレブ妻フェイスの娘、マリア。
夫の浮気に悩むステラの娘、テレサ
シングルファーザー教師フリオの娘、レオノーラ。
彼女たちは小学校の遠足バスで事故に遭い、幼くして亡くなった。
親たちの悲しみを癒すため、医学博士・マノロが娘たちにそっくりな人形を提供するも、奇妙な事件が起こり始める。
一方、小学校には少年の幽霊が現れる。

 

【ひとこと感想】
話が進むにつれて『忍ぶどころか暴れるぜ!』な人形ホラー。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
① 『序』の悲惨なバス事故
②人形の不気味な造形
③お化けも人間もすごく元気

 

【①『序』の悲惨なバス事故】
予告編からバレバレでしょうが、基本的にはこちらの作品はB級です。
ただし、最初に起こったバス事故の描写は「どうした?」と言いたくなるほど非常に『抉って』きます。

救急車のサイレンの音。
横転したバスから引き上げられる、血まみれの小さな子どもの体。
叫び声。泣き声。慟哭。
家の中の太陽を失った家族の姿。

リアルで怖かったです。
胸が潰される感じで、本気で「やだよ……」と呟いた。

子どもが死ぬのはつらい。

硫酸で満たされた沼に囚われるような悲しみならば、掬われるために人形にすがるのも当然と言えます。

 

【②人形の不気味な造形】

だがその人形の造形がアレすぎだ。(オブラート表現)

( ・⌓・)<もう少し可愛くできんかね?

そのド派手なまつげ、特に下まつげは何かね。昔のヤマンバギャルリスペクトかね。
最初のバス事故の悲しみが和らぐほどのツッコミだらけでした。

ていうか人形ホラーっていつもこう。溢れ出る「それは可愛いという認識で合ってるのか?」オーラ。アナベルもチャッキーも。市松人形はケースバイケース。

そんな「うわ絶対に夜に動き出すぞこれ」感が凄まじい人形たちは、ニンゲンたちを害するために暗躍します。

否、暗躍どころじゃなかった。

 

【③お化けも人間もすごく元気】

視聴の際の自分のサイレントツッコミを羅列します。

・めっちゃ分かりやすく笑うやーん。
(※人形たちの表情はチャッキーばりにコロコロ変わる)

・めっちゃアクティブに動くやーん。
(※自撮り大好きお手伝いさんの寝姿を撮ったり)

・めっちゃキレてんじゃーん。※①
(※父親が校長先生に怒られるのを見たレオノーラ、母親が第二子を妊娠したことを知ったマリアなど)

ちなみに動く人形のカラクリは、生きた人間に人形マスクを被せていました。
なので生命力に満ちていました。まさに『忍ぶどころか暴れるぜ!』。

お気に入りは、

①部屋から出てきた校長を待ち伏せてぶん殴る場面。
(シュールすぎる)
②フェイスの夫を車でキャッキャしながら轢き殺す場面。
(「テレサ、乗って!」じゃないよ、なんで人形っつうか推定7歳児が車の運転してんの)

です!

人形ホラーだって言ってるのに(観ている分には)人形がまったく怖くないというカオスの中。
恐怖成分を担うのは、人形のレオノーラに依存していくフリオ。
そして、バス事故の前から現れる火傷だらけの少年・エンドルでした。

 

【まとめ:最後に残った感情は怒りでした】
真相は、このエンドル少年の親による復讐です。

とある黒魔術師が人形たちを傀儡にしていると悪魔祓師が言いました。
(ここでそういう世界観だったんだと驚く)

三人の親たちがエンドル少年の死を隠蔽したことが判明する際、こんなセリフが出てきました。

 

黒幕の弟:「金持ちには勝てないよ」

 

フィリピンでは貧富の差が激しいと聞きます。こういう密かに風刺を紛れ込ませるのもホラーの妙です。
(この部分は日本も同様ですが)

だがしかし。
黒幕の怒りには共感しますが、やり方には絶対に納得できない。
フェイス、ステラ、フリオに復讐したいのなら直で本人に行くべきだ。
何故その子どもまで巻き込むのか。挙げ句の果てにバス事故を起こして、関係のない子どもたちも大勢亡くした。

「ただ殺すだけじゃ飽き足らない」じゃないよ飽き足っとけ、健全に復讐しろ!!

という感じでエンドロール中にキレ散らかしました。

いや、この『実は人形たちは死んだ子の魂が乗り移ったのではなく、黒魔術師が復讐のために操っていた』という真相によって、(※①)部分の場面の意味がクルッと変わる……という手法には唸らされましたけども!

(マリアの嫉妬ではなくてフェイスの妊娠=幸せになるに対しての怒りだった、とか、レオノーラの父への思いではなく校長への怒りだったとか)

そしてエンドロール後。ホラーにありがちな『悪夢はまだ終わらない』展開。

何故新しく人形を提供するのがフリオなのか。
自分が人形によって癒されたからガチの布教なのか。謎は深まるばかりです。

というか、人形へのスタンスが男女で違っていて面白かったです。
女性陣は襲ってくる人形に対して「私の子じゃない!」と切り替え早く蹴っ飛ばすに対して、
男性のフリオは「パパ、私よ。殺さないで🥺」攻撃にまんまとハマっていました。なかなか興味深い💯

 

次回は4月4日 4月11日月曜日、
2021年制作、日本のサイコホラー(シュールコメディ)映画、
『リカ 自称28歳の純愛モンスター』の話をします。

 

鳥谷綾斗